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2007.04.25 Wed
ずいぶん間の開いたロボット小説。
第2話ゆくです。



ぱちぱちとシーリアは瞬きした。
メンテナンス台の上。
見上げたライトは消えてて、妙にクリアだった。
「ラズ、変に良く見えるよ」
「ん?今までが見えて居なかったんじゃないのか?」
ラズナウムに言われて、シーリアは少し不満気に口を尖らせた。
「まぁ、そういう言い方をしなくても」
クスクスとマーナスが笑う声。
「私たちロボットも人と同じ様に目にはレンズが入っているんですよ。
シーリアさんのレンズは濁りが出てきていたんです」
ほら、と言うようにマーナスはシーリアに二つの小さな硝子玉のような物を見せた。
「これ、あたしの目からとったの?」
「ええ、新しいものと交換しました」
ふぅん…
と好奇心旺盛にシーリアは硝子玉を手にとった。
光に透かすと、少し乳白色なのがわかった。
「そんなに濁ってないじゃん」
「少し濁っているだけでも、見えづらくなってしまうんですよ」
「コレって捨てちゃうの?」
「いいえ。
濁りを取るために清浄剤に暫く浸けて、濁りが取れたものは、溶かしてレンズにリサイクルして、濁りがとれない物も別の部品に造り直すんですよ」
「じゃぁ、いつか私が壊れても、また誰かの一部になるんだ」
シーリアがそう言うと、マーナスは不思議そうにシーリアを見た。
「私考えた事もなかったですよ。
自分が壊れたらなんて…」
「まぁ、余程の事がなければ私達はスクラップにされないからな」
苦笑いしながら、ラズナウム。
「そうなの?」
シーリアはラズナウムを見上げた。
「ああ、特にお前は、無いだろうな。
学会挙げての一大プロジェクトだからな。
もしもスクラップに成るような事があったら、学会本部のホールにでも飾られるだろう」横目でチラリとシーリアを見て、ラズナウム。
「え゛」
それは何だか嫌、とシーリアは顔をしかめた。
「ラズは?ラズも研究用だったんでしょ?」
ラズナウムは再びメンテナンス記録に目を落としていた。
「ああ、元々は研究用だが、もう私達の研究は終わったからな。
今はただのメンテナンスロボットだ」
ラズナウムは顔を上げずに淡々と言った。
「あら、そうなんですか?
博士は、貴方とベナルサーチは今でも見ていて面白い、と言ってましたけど」
マーナスは笑って頭一つ以上大きなラズナウムを見上げた。
「それは…学術的な物とは違う意味じゃないか?」
若干呆れたような諦めたようなラズナウムの返答。
「?ベスもなの?」
同じ家に暮らす、金髪のロボットを思い浮かべる。
「お前、しらなかったのか?
全く同じ性能のロボット5体に、異なる性格プログラムをのせて、経験の蓄積の違いを見るという研究だったんだ。
つまり私とベナルサーチは全く同型なんだ。」
「じゃぁ、ラズとおんなじロボットが五体いるの?」
シーリアはラズナウムを見上げる。
「理論上はな。
だけど、私とベナルサーチは全く違うだろう?
他の三体も全く違う。
お前、フォレストと会った事が無かったか?」
「フォレスト?」
シーリアはきょとんとして聞き返した。
「本部に居る、緑の髪メンテナンスロボットですよ」
と、マーナスはシーリアの顔を見て言った。
あたし、会ったことあるっけ?とシーリアはラズナウムを見上げた。
「その顔じゃ、会ったこと無さそうだな。
フォレストも私たちと同型なんだ」
「でも、同じ性能なら、同じ様になるんじゃないの?」
ラズナウムは口元に笑みを浮かべた。
「それがファエンの面白い所だな。
全く同じ性能なのに、性格プログラムをちょっと変えただけで、経験の蓄積に違いが出たんだ。
一定期間、一緒に同じ講習をうけて、損失したロボットにどういう処置を行うか?というテストをした。
どうなったと思う?」ラズナウムはシーリアを見た。
「一緒に、同じ講習を受けたんでしょ?」
シーリアの問いに、ラズナウムは頷いた。
「じゃぁ、同じ判断をしたと思う」
ラズナウムは口元に笑みを浮かべた。
「全員が違う判断をしたんだ。
同じ性能・同じ電脳。異なるのは性格をプログラムしたコードだけのロボット達が、同じ話を聞いて、学んだことが違かったんだ」
そう言葉を切って面白そうにシーリアとマーナスを見比べる。
「シーリアは自分がいつか壊れると思ってる。
マーナスは自分達は壊れないと思っている。
その意識の違いは何処から来る?」
ラズナウムはシーリアとマーナスを見比べた。
「マーナスは私たちヒューマノイドが余程の事が無い限りスクラップにならない事を知っている。
ではシーリアは、何故自分がいつか壊れると思ってたのか。
それはシーリアが人間として生きているからだ」
シーリアには、意味が解らなかった。
自分は人間ではないと知っているから。
「シーリアは、ずっと人間と同じ様に育てられてきた。
だから、いつか死ぬ…スクラップに成ることは、シーリアにとって当たり前の事なんだ」
ラズナウムは言葉を切って、解らないと言った顔をしているシーリアとマーナスを見て、その後時計を見た。
「続きは、また今度だな。
メンテナンスの予約が入っているんだ。そろそろ来る筈だ。
マーナス、シーリアのプログラムのバックアップをとって、通常項目の検査をしたら帰していいから」
任せたぞ、とラズナウム。
「わかりました、行きましょう、シーリアさん」
シーリアとマーナスは、隣のラボに
ラズナウムは手元の電子メンテナンス記録から、メインコンピュータにアクセスしたようで、部屋にメインコンピュータの音声が響いた。
―登録code00014 ラズナウム 光彩による識別を行います。
ラズナウムは、手元の半透明な電子モニターを見つめる。
モニターから伸びた細い光がラズナウムの瞳を捉えた。
―承認完了。
メンテナンスロボットの声が、ラボに響く。その声を遮るようにシーリアの背後でシャッと音を立ててラボの隔壁が閉じた。
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